フロントレンジフレックス(Front Range™ Flex)コレクションを支える、革新的な素材の物語
最近のランニングシューズを見て、「アッパー部分はどんな素材でできているんだろう?」と思ったことはありませんか?
最近のスポーツシューズは、アッパー部分が複数のパーツを縫い合わせた構造ではなく、一枚のメッシュ素材で立体的に編み上げられたモデルが増えています。 足を包み込むようにフィットし、軽やかな履き心地を実現しているのが特徴です。この素材は「エンジニアードニット」と呼ばれ、フロントレンジ フレックスコレクションにも採用されています。 必要な部分にはしっかりとしたサポート性を持たせながら、一枚の素材で編み上げることで、まるで靴下のような自然なフィット感を実現しています。

エンジニアードニットがスポーツシューズに広く採用されるようになると、Ruffwearの開発チームもその素材に注目しました。特別な補強材を重ねなくても自然に形を保ち、しなやかに動き、優れた通気性を備えている――。そんな素材の特性を見て、「この技術を犬用ギアにも活かせるのではないか」と考えたのです。
なぜエンジニアードニットを採用したのか
これまでRuffwearの多くのハーネスやパックには、レインウェアやバックパックにも使われる、丈夫な織物素材を採用してきました。この素材は、経糸と緯糸を織り合わせた生地にコーティングを施すことで、形状を保ちながら高い耐水性や耐摩耗性を実現しています。つまり、雨や擦れなどの外的なダメージから製品をしっかり守るための素材です。

一方で、このコーティングは製品を守る役割を果たす反面、通気性という面では限界があります。犬は、特にダブルコートの犬種では、被毛の間に空気を取り込み、逃がすことで体温を調節しています。そのため、通気性の低い素材は、この自然な体温調節の妨げになってしまうことがあります。そこで着目したのがエンジニアードニットです。通気性に優れたこの素材なら、犬本来の体温調節を妨げることなく、より快適な着け心地を実現できます。
「エンジニアードニットは、新しいフロントレンジ フレックスハーネスの優れた通気性を支える重要な素材です。構造的な強度を維持しながら、ここまで高い通気性を実現できる素材は他にはなかなかありません。」Monica Broder Ruffwear シニアデザインマネージャー

その違いは、素材のつくり方にあります。エンジニアードニットは、糸を立体的に編み上げることで、素材そのものが形状を保つ構造になっています。そのため、従来のようなコーティングに頼る必要がありません。通気性を損なうことなく、水を弾き、空気をしっかりと通す。これが、エンジニアードニットならではの特長です。
無駄を減らす、新しいものづくり
エンジニアードニットの魅力は、優れた通気性だけではありません。私たちが注目したのは、この素材そのものだけでなく、「どのようにつくられるか」という製造方法でした。それは、Ruffwearが目指す環境に配慮したものづくりにおいても、大きな可能性を秘めていました。
多くのアウトドアギアは、「裁断・縫製」という昔から変わらない製法でつくられています。大きな生地からパーツやループ、補強材などを切り出し、それらを一つひとつ縫い合わせて製品に仕上げる方法です。長年使われてきた、信頼性の高い製法です。

しかし、どれだけ効率よく生地を配置して裁断しても、どうしても使われない端材が発生します。その端材はリサイクルするにもエネルギーが必要で、場合によっては廃棄されてしまいます。 クッキー生地を型抜きする様子を思い浮かべてみてください。できるだけ無駄なく型を抜いても、どうしても余りが出てしまいます。そして、クッキーの生地と違って布は、その余りをもう一度元の形に戻して使うことはできません。
エンジニアードニットは、生地を切り出すのではなく、必要な形をそのまま編み上げる製法です。そのため、裁断による端材がほとんど発生しません。Ruffwear プロダクトラインマネージャーのCristina Stavroは、次のように話します。 「この製法では、必要な形だけを編み上げることができます。そのため、無駄になる素材はごくわずかで、ほとんどが編み終わりの糸だけです。」
例えば、一般的なハーネスのライトループは、小さなウェビングテープを別に用意し、本体に縫い付けて作られています。このパーツも、生地から切り出し、いくつもの工程を経て、一つひとつ丁寧に縫い付けられています。
一方、フロントレンジ フレックスハーネスでは、ライトループもハーネス本体と一体になるよう編み込まれいるので、別パーツを後から縫い付ける必要がありません。同じ考え方は、フロントレンジ フレックスカラーにも採用されています。IDタグを取り付けるループもカラー(首輪)本体に編み込まれ、反射素材も縫い付けるのではなく、熱圧着によって一体化されています。

従来のように生地を裁断して縫い合わせる製法では、素材が重なり合う部分が多くなり、その重なり一つひとつが硬さの原因となっていました。その点、フロントレンジ フレックスは、そうした重なりをできるだけ減らすことで、着けた瞬間から犬の体に自然になじみ、動きに合わせてしなやかにフィットします。
こうした細かな工夫により、フロントレンジ フレックスコレクションは、余分なパーツや素材の重なりを抑えた、シームレスな仕上がりを実現しています。 「私たちはこれを『It's love-at-first-fit.(着けた瞬間に恋するフィット感)』と表現しています。犬に着けると、その子の体の形にすっとなじみ、まるで最初から体の一部だったかのように自然にフィットします。素早く体になじむギアほど、犬の動きを妨げることなく、一緒に動いてくれる存在になるのです。」 — Ruffwear プロダクトラインマネージャー Cristina Stavro

Ruffwearの品質基準
スポーツシューズ用として開発された素材を、犬用ギアという新しい用途で活用するには、本当に期待どおりの性能を発揮できるのかを徹底的に検証する必要がありました。そのため、あえて厳しい条件で検証を行い、見落としがちな課題まで一つひとつ洗い出しながら、その性能と品質を確認しました。
「犬たちは、いつだって私たちの想像を超える使い方をしてくれます。そんなタフなユーザーだからこそ、その挑戦に応えられるギアをつくることが、私たちのものづくりです。」— Ruffwear プロダクトラインマネージャー Cristina Stavro
エンジニアードニットは、スポーツシューズの分野ですでに高い評価を得ている素材です。しかし、犬がギアを使う環境や動きは、人が靴を履く場合とはまったく異なります。そのためRuffwearでは、この素材を採用した製品にも過酷な条件下でのテストを繰り返し行い、ブランドが定める厳しい品質基準を満たしていることを確認しています。

「エンジニアードニットには、これまでのハーネスと同じラボ試験や耐久試験をすべて実施しました。それ以上にテストを重ねた項目もあります。『シューズで実績があるから、そのままハーネスにも使おう』という考えではありません。新しいギアを開発するときと同じように、毎日の使用に何年も耐えられることを一つひとつ確認しています。」— Ruffwear プロダクトラインマネージャー Cristina Stavro
通気性と、強度・耐摩耗性・耐UV性を高いレベルで両立できる糸の組み合わせを追求し、Ruffwearが大切にしてきた耐久性へのこだわりと同じ基準で開発を進めました。その結果、エンジニアードニットはすべてのテストをクリア。速乾性や色あせしにくさといった性能でも実証されました。

新たな可能性へ
フロントレンジ フレックスコレクションは、エンジニアードニットにとって大きな一歩となるコレクションです。私たちはすでに、この素材を今後の製品開発にどのように活かしていけるか、新たな可能性を探っています。この素材への理解を深めるほど、活用できる場面はさらに広がっていきます。次なる進化にも、私たちは大きな期待を寄せています。
これは、まだ始まりにすぎません。より多くの知識を積み重ね、自分たち自身を超え続けながら、より少ない廃棄物と資源で、新しい価値を持つギアを生み出していく。そして、犬たちがアウトドアを自由に楽しみ、快適に冒険できるように――。Ruffwearはこれからも、新しい挑戦を続けていきます。