新しい家族として子犬を迎えたあの日。
新しい犬を家族に迎え入れるのは想像以上に大変です。今回Ruffwearのアンバサダーのシオバン・セラーが、小型犬ルナを家族に迎え入れた時の体験を語ってくれました。彼女がルナを受け入れるにあたって家族が直面した困難や先住犬とのトラブル、それをどう乗り越えたかについて詳しく聞いてみました。
愛犬ルナと先住犬ロシュ(シオバン・セラー)
「犬がすぐ家族に馴染んでくれて、あっという間にかけがえのない存在になった」
そんな夢のような体験はそう簡単にはおこりません。特に、先住犬がいる家族が新しい犬を迎えるときには犬同士の相性が問題になります。「先住犬が新しい犬と、仲良くしようとしない」「先住犬が新しい犬とおもちゃをシェアすることを嫌がる」という話は、本当によく耳にします。最初に仲が悪いと「一生、そのままなのかも…」と心配するひともいますが、そんなことはありません。ちょっとした工夫と努力で関係をよくしていくことができます。
私が初めてルナを先住犬であるロシュに紹介した時、ロシュはルナに拒絶反応を示していました。新しい犬を迎え入れるということを決めた時点で、こういうこともあることは覚悟していたのでがっかりはしませんでした。それでも最初の数カ月はいろいろな面で苦労がありました。
ロシュは他の犬とは仲良くできますが、自分から積極的に関わりにいく性格ではありませんでした。私達や他の犬と一緒に遊ぶのも好きでしたが、自分のパーソナルスペースをしっかり持つ犬でした。特にロシュはあまり子犬が好きではありませんでした。ルナを家族に迎えると決めた時に、ルナとロシュが仲良くなるまで少し時間はかかるだろうと覚悟をしていました。それは、先住犬がいる家に新しい子犬を迎え入れようとしている人達は知っておくべきことです。先住犬は、新しい家族とすぐに仲良くなれるのか、新しい家族に敵意は持たないのか。新しい家族を受け入れる前に、十分に観察し、理解しておくことは大切なポイントです。
ルナは親しい友人から譲りうけたので、受け入れる前にロシュは何度かルナと会う機会がありました。ロシュは始めから子犬が苦手だったわけではありません。友人の家で子犬が産まれた時に、ロシュは子犬の存在に興味深々で、尻尾を振りながら交流を楽しんでいました。でも子犬が大きくなって、ロシュのしっぽを追っかけまわし、おもちゃのように遊び始めました。パーソナルスペースを大切にするロシュは、この出来事をきっかけに子犬に対する警戒心を強めてしまったのです。私達は、ルナを正式な家族に迎え入れるまでの期間を使い、友人の家を何度か訪れ、ロシュの子犬に対する警戒心を解こうとしましたが、ロシュの子犬に対する警戒心はなくなりませんでした。
ルナが家に来てから1週間がたったころ、ロシュはルナと同じ部屋で過ごすことを完全に避けている様子でした。ロシュは、ルナがゲージの外にいるのを見るとドアへ一目散に向かい、別の部屋で過ごすようになっていました。私自身は「ルナとロシュがもう少し仲良くしてくれればいいな」と思ってはいましたが、「ロシュにとって必要な距離感があるのだろう」と考えていたので、2匹の関係性に特に大きな心配はしていませんでした。私は、「もっと時間をともに過ごせば、ロシュも少しずつルナのいる空間に慣れてくるだろう」と考えていたのです。
一方で私達家族は、2匹にとって家が居心地のよい空間になるように様々工夫をしていました。例えば、私達と別の部屋で過ごすことが多くなったロシュが寂しくないように、ルナがゲージでうたた寝している時間は、ロシュと積極的に触れ合うようにしていました。またこの時期、ロシュとルナが思いっきり遊べるように、庭に2匹それぞれの専用スペースを作りました。
ルナを家族に迎え入れてから数週間が経った頃、ロシュは、みんなと違う空間で長時間過ごすことにうんざりしてきたのか、ルナと同じ部屋で過ごす時間をだんだん増やしていきました。まずは、小型犬のルナが自力では上れない、ロシュにとって安全地帯であるソファの上で過ごしていましたが。
この頃家族は、好奇心いっぱいのルナがロシュの耳や尻尾に嚙みつかないように細心の注意を払っていました。
このころ私達は、2匹の間になるべくポジティブな瞬間を多く作りだすよう配慮していました。ロシュはおとなしめの犬で、ルナとコミュニケーションをする上で積極的な方法を望んでいないのは明らかでした。そのため、ルナが暴れてロシュに噛みつきそうになったら私達が2匹の間に入り、気をそらすようにしたり、ルナが疲れているなと感じたらゲージの中でお昼寝をさせるようにと様々に工夫をしました。
ルナが家に来てから5週間がたった頃、ルナを初めてキャンプに連れていくことにしました。キャンプには、ルナのブリーダーさんや両親犬、兄弟犬も参加していました。キャンプを通して、ルナが兄弟犬達とストレスなく思いっきり遊べる時間を作れたらいいなと考えていました。それに両親犬と再会することで犬としての大切なことを学んでくれるのではないかと期待していました。
このキャンプはルナとロシュにとって、特別な関係性を築くいいきっかけとなりました。キャンプが始まって数日後に、ルナが妹の子犬と遊んでいたのを見たロシュは、自分からルナと遊び始めたのです。この瞬間は私達にとって決して忘れられない出来事になりました。何年たっても、この瞬間を思い出して心があったかくなる出来事です。仲の悪かった彼らが、かけがえのない絆を築いていく過程は、私に「あきらめなければ、いつか物事は上手くいくんだ」ということを思い出させてくれました。
現在、ルナを家族に受け入れてから10ヶ月が経とうとしています。ロシュは、最初とはうってかわって、新しい妹がいる生活を楽しんでいるように見えます。ロシュは、毎日のように走り回るような元気な犬ではありませんが、楽しそうな出来事を見つけるとルナを誘って外に出かけるような素振りを見せてくれています。ルナはロシュが「パーソナルスペースを大切にする犬」ということを学んだのか、自分の時間が欲しそうなときにはロシュのスペースを作るようにしてくれています。私達家族は、ルナとロシュの友情が芽生えていく10ヶ月を側でみることができた嬉しさを噛みしめています。
ルナを家族に迎えてから、ロシュと打ち解けるまでに大変なことはたくさんありました。でも、その過程で後悔したこと、やり直しをしたいことはありません。
私達は2匹が自然に友情を築いていけるように必要な工夫や努力をし、その結果ルナとロシュの間にかけがえのない友情が生まれていったのだと感じています。
今、新しい子犬を迎え入れたいと考えている人に私から伝えたいのは1つです。
「先住犬と新しく来る子犬がどうやったら馴染むことができるのか?」を迎え入れる前にしっかりと考えておくことが重要です。先住犬が子犬に対してどんな反応をするのか、他の犬たちと遊ぶときはどんな様子なのかをしっかり観察してあげましょう。受け入れた犬と先住犬が初めはうまく馴染めなくても、犬のことをしっかり理解し、馴染めるような工夫をすることで、状況は良い方向に変えていくことができます。
その証拠として、ルナは私達の生活にすっかり溶け込んでくれました。それどころか、ルナは家族に沢山のポジティブな変化をもたらし、ロシュにも私達にとっても最高の相棒となってくれています。
私達にとってルナは、かけがえのない家族の一員です。
そしてその関係は、この先もずっと続いていくことでしょう。